無職だけど積立NISAを始めてみたい! でも、収入がないのに利用できるのかな?
こんな疑問を解決するために、わかりやすく記事を書きました。執筆は相談実績15年以上の現役ファイナンシャルプランナー(FP)が担当しています。
この記事では、無職期間中に積立NISAを活用する方法について詳しくお話をしましょう。
積立NISAの基礎知識から、無職でも利用可能な理由、相性のいい証券会社まで、順を追ってわかりやすく解説。サラッと読むだけで、自信を持って積立NISAを始めるための実践的な知識が身につく内容です。
それでは早速、FP相談の実務で得たエッセンスをお伝えしていきます。
無職でも利用できる積立NISA
専業主婦だけど、人気の積立NISAを始めてみたい!
私のFP相談では こういった相談が増えていますが、無職だと積立NISAを利用できないと思っている人も珍しくありません。
本章では、積立NISAのキホンから 口座開設、無職だからこそ得られるメリットを理解しましょう。
積立NISAは収入に関わらず利用できる制度
2年前の結婚を機に退職。子育てが落ち着いたら仕事を再開するつもりだけど、今は専業主婦で無職だし…。やっぱり積立NISAは無理かしら? 独身時代の貯金から、少しずつ投資してみたいんだけどなぁ。
ご安心ください。収入のない主婦の方でも、まったく問題なく積立NISAを利用できますよ。
積立NISA(つみたてニーサ)は、長期的な資産形成を促進するために 国が創設した制度。
特徴の一つとして挙げられるのは「収入に関係なく利用できる」こと。そもそも積立NISAは、専業主婦や学生をはじめとした無職の方も含め、幅広い層が資産運用を始める機会を提供する目的で作られたのだから当然ですね。
積立NISAでは年間120万円までの投資金額が非課税扱いになります。この非課税枠は無期限で活用できるため(2024年の新制度)、長期的な資産形成に使わない手はありません。
たとえ無職で収入ゼロでも、投資に回せる余裕資金があるなら積立NISAの利用を検討しましょう。少額からコツコツ投資を続ければ、将来的に安定した資産を築くことが可能です。
NISA(ニーサ)は少額投資を推進する「少額投資非課税制度」。(Nippon Individual Savings Accountの略)。
NISA口座で投資した金融商品から得られる利益は非課税(通常は20.315%課税)になるが、投資金額に上限が設けられている。
・2014年 一般NISA 開始
・2016年 ジュニアNISA 開始
・2018年 積立(つみたて)NISA 開始
・2024年 新制度 開始
無職の方に対する配慮が感じられる口座開設
学生だから収入はほぼ無いんだけど、貯めてきたお年玉やお祝いを使って積立NISAを始めてみたい! ただ、証券口座の開設手続きなんてやったことないから不安で…。
証券口座開設時の入力項目は金融機関によって異なりますが、収入状況の質問も正直に答えればOK。手続きも実に簡単ですから、何の心配もいりません。
積立NISAでは、通常の証券口座開設時に求められる「収入証明」や「雇用証明書」を不要とする金融機関がほとんど。
これなら、無職の方が口座開設でストレスを感じることもないでしょう。ネット証券ならオンラインの簡単な手続きで口座開設できるから、手間をかけたくない人にオススメです。
収入状況の確認にしても「無職」または「収入なし」と申告するだけ。こんなアッサリした金融機関が一般的だと思います。
ただし、無職かどうかを問わず、積立NISAの口座開設には次の3条件をクリアしてください。
① 反社会的勢力(または関わりがないこと)ではないこと
② 日本国内に居住していること
③ 口座開設の手続きを、申込する本人が行っていること
②については例外もあるようですが、大手証券会社では必須条件になっています。
積立NISAを無職期間中に始めるメリット
無職期間中に積立NISAを始めるなんてダメかしら? 安定した収入を稼げるまで、投資は見合わせたほうがいいかも。
もちろん無理をするのはNGですが、無職期間中だからこそ享受できるメリットもありますよ。
無職なのに投資。そう聞くと、少々怪しげな雰囲気を感じます(笑)
でも、無職期間中に積立NISAを始めると得られる、いくつかの大きなメリット。これも見逃せません。
【時間に余裕がある】
投資先の選定や市場の勉強に十分な時間をかけられる。
→ 将来的に投資を続けていくうえで、重要な知識と経験を積めるチャンス。
【失敗しても大ケガしない】
少額から始められる積立NISA。無職期間なら 生活を支えるほどの収入は もともと無い。
→ たとえ損失を被ったとしても、それが原因で困窮する可能性は低い。
【運用期間が長くなる】
積立NISAの長期的な非課税効果を最大限に活用するには、早く始めることが重要。
→ 無職期間中に投資をスタートすれば、資産形成の時間をより長く確保できる。
無職の利点でいちばん大きいのは、何と言っても「時間の余裕」。
職に就いていたら どうしても自由に使える時間は限られますが、無職期間中に投資の勉強をするのは難しくない。やる気さえあれば、いくらでも知識を吸収できるでしょう。
また、積立NISAは少額から投資できるのがウリですから、無職で収入が限られている状況でも負担になりにくいと思いませんか?
たとえば、毎月1,000円で積立を開始して、将来的に収入が増えた段階で投資金額を増やせばいい。そうすることで、結果的に投資のウォーミングアップができちゃいます。
そして、積立NISAの運用期間が長いほど 非課税効果が生まれやすくなるわけで。無職だからとあきらめず、可能なら 一日も早くスタートするべき。どんなお金持ちでも時間を戻すことはできませんからね。
無職で積立NISAを使うならココに注意!
ここからは、積立NISAを始めるにあたって「気をつけてほしいこと」をお伝えします。
有職・無職に関わらず 心得ておくべきポイントのほか、無職の方が特に注意したい点も頭に入れておきましょう。
生活費と投資資金のバランスを取ろう
今は無職で次の仕事に必要な資格を取得してるところ。前職の給料を貯めてたから生活費は問題ないけど、どのくらい投資に回していいのかな?
現在の保有資産を把握・分類したうえで、投資に回せる余剰資金を導き出しましょう。
私のFP相談でご紹介している資産の分類方法は次のとおり。これで余剰資金を明確に分けることができます。
①「生活資金」
・有職中(会社員): 生活費×6カ月分
・有職中(自営業): 生活費×1年分
・無職中 : 上記+生活費×(収入を得られるまでの月数+6ヵ月)
②「3年以内に使う予定のお金」
【余剰資金】=貯蓄額-(①+②)
たとえば、無職期間中のあなたが1年後に就職する想定だとして、今の貯蓄が500万円で毎月の生活費が15万円、3年以内に使う予定のお金が100万円なら、余剰資金は以下のようになります。
①「生活資金」
→ 15万円×(12か月+6ヵ月)=270万円
②「3年以内に使う予定のお金」
→ 100万円
【余剰資金】
→ 500万円-(270万円+100万円)=130万円
無職期間中に積立NISAを利用する際には、生活費と投資資金のバランスを取ることが重要です。あくまで余剰資金で投資することをお忘れなく。
そのためには、生活費の見直しを行い、必要最低限の支出を明確にすることから始めてください。毎月の固定費(家賃、光熱費、食費など)を把握し、それ以外の支出を抑えるのが基本。
FP相談をしていると、稀に失業保険を収入とみなして貯蓄額に加える人がいますが、結果的に余剰資金が増えることになってしまうのでNGです。失業保険で手にしたお金は、上記の計算から除外しておきましょう。
なお、仕事に就かぬまま「投資の利益で生活しよう」などという幻想は抱かないでください。投資は“生き馬の目を抜く”ような世界。素人のビギナーズラックなど 続きやしません。
想定外の事態が起きたら?緊急予備資金の重要性
積立NISAで投資したお金は 長期で運用するんだから、できるだけ引き出さないほうがいいわよね。でも、不測の事態が起きたときはどうすればいいのかしら?
自然災害・病気・事故など、不測の事態に備えるお金(緊急予備資金)があると安心です。できれば、投資や生活資金とは別の口座で管理しておきましょう。
実は、この緊急予備資金。先ほどの「余剰資金の算出方法」で登場していますが、おさらいの意味を込めて解説しておきます。
【金額の目安】
・会社員: 生活費×6カ月分
・自営業: 生活費×1年分
※自営業に比べ、会社員は健康保険・雇用保険が手厚い
無職期間中は経済基盤が軟弱ですから、予期せぬ出費や緊急時の対応にも備えておかなければいけません。
金額の目安は、上記のとおり 会社員より自営業のほうが多くなりますが、無職の方は自営業の基準で計算してください。
なお、緊急予備資金は リスクの少ない現金や普通預金にしておくのがオススメです。いつでも すぐに使えるため、急な支出が発生しても 積立NISAの投資を中断せずに済みます。
もうひとつ、緊急時のお金を準備しておくことで「安心感が得られる」というメリットも見逃せません。なにしろ、健やかなメンタルは、冷静な投資判断に欠かせない条件ですから。
無職の積立NISA。証券会社選びのポイント
学生だから収入は無いけど、貯金から少しずつ積立NISAに投資するとしたら、どんな証券会社を選べばいいのかな?
無職だと、どうしても投資資金は限られるもの。だからこそ、証券会社との相性は重要です。ここでは、選び方を間違えないためのポイントをお伝えしていきましょう。
投資する資金が少額の場合、証券会社選びで気をつけたいのは次の3つ。
①【手数料が安い】
証券会社によって、手数料のタイプが2種類ある
・1約定制 :1回の注文(取引)ごとに手数料が発生する
・1日定額制:1日の約定代金(合計)で手数料が決まる
②【ポイントが貯まる】
クレジットカードで投資信託を積立購入するとポイントが付与される
→ 付与率が高いほどお得
③【単元未満株取引(ミニ株)が可能】
通常100株以上でないと購入できない株式が1株から買える
→ まとまった資金がなくても投資できる
積立NISAは、認可された投資信託しか購入できないので③は関係ありませんが、一般NISA(成長投資枠)ならミニ株も買えます。
そもそも、NISA口座は1人1つしか開設できませんでしたが、2024年にスタートしたNISA(新NISA)から、積立NISA(つみたて投資枠)と一般NISA(成長投資枠)は1つの口座で管理されることに。
つまり、今は積立NISAしか興味がなくても、成長投資枠の使い勝手も考えて証券会社を選んでおかなければ、あとで後悔するかもしれないわけです。
さて、これら3条件を高いレベルでクリアしているのは どの証券会社か? 現時点では楽天証券。次点でSBI証券を挙げたいと思います。
ちなみに、SBI証券が次点の理由は クレカ積立のポイント還元率(のルール)が複雑なこと。(下枠参照)
・三井住友カード[NL](年会費無料)→ 最大0.5%
・三井住友カード ゴールド(年会費5,500円)→ 最大1.0%
・三井住友カード プラチナプリファード(年会費33,000円)→ 最大3.0%
※ 還元率は前年のカード利用金額によって変動。利用状況が一定額以上になると年会費が免除される。
SBI証券も国内株式の売買手数料は0円だし、「S株」で単元未満株取引もできます。
利用金額が大きくて、楽天ポイントより 三井住友カードのポイント(Vポイント)のほうが使いやすい人には向いているかもしれません。
積立NISAが無職の未来を明るくする
無職といっても、主婦・学生・失業中など 様々なケースがあるでしょう。
この章では主に(再就職を目指して)失業中の方へ向けたアドバイスをしていきます。
もちろん、主婦や学生の方にも参考になる内容ですから、ぜひご一読ください。
無職だからこそ考えるべき計画的なアプローチ
無職で積立NISAを始めるとき、どんなことを考えるべきかしら? せっかく時間に余裕があるんだから、きちんと計画を立てて投資したいわ。
素晴らしい心構えですね。投資の勉強や、計画立案に費やした努力は裏切りません。がんばりましょう!
無職期間中に積立NISAを始めて、長期的な資産形成を目指す。そのためには、計画的なアプローチが重要です。
とても基本的なことですが、いつも私のFP相談でお伝えしていることをご紹介しましょう。
【少額から始める】
無職期間中は経済基盤が不安定 → 少額からスタートすること
積立NISAでは毎月100円から積み立てが可能(金融機関によって異なる)。少額でも長期間積み立てることで、複利的効果を最大限に活用。
【分散投資を行う】
リスクを抑えるためには、分散投資が欠かせない
複数の投資信託を選び(国内外の株式や債券など)異なる資産クラスに分散して運用することで、リスクを低減しつつ、安定したリターンを目指すことができる。
【定期的な見直し】
投資環境は常に変動する → 定期的な運用状況の見直しが不可欠
目標に合った運用ができていなければ、必要に応じてリバランス(下記info参照)を行う。少なくとも半年に一度は、投資商品のパフォーマンスをチェックする。
【情報収集を怠らない】
無職期間中は時間に余裕がある → 投資に関する情報収集を積極的に行う
書籍やネット、セミナーなどを利用して知識を深め、自分の頭で投資判断ができるようにする。
投資は自己責任。もし損をしても他人のせいにはできません。だからこそ、本質の部分は(経験しながら)独学するしかないし、最後の決断は孤独です。
時間に余裕がある今のうちに、その素養を身につけてください。
失業中は心理的安定を得ることも大切
次の就職先がなかなか決まらなくて、よく眠れない日もあるんだ。でも、こんな時だからこそ積立NISAを始めたい! これってマズいかな?
いいえ。少額ならストレスも少なく、むしろポジティブな側面のほうが大きいでしょう。余剰資金があるなら、積立NISAをオススメします。
無職期間中は、経済的不安だけでなく、心理的なストレスも大きな課題です。積立NISAを活用して、メンタルを整えてください。
【投資を通じた安心感の獲得】
積立NISAを活用 → 将来の資産形成に対する安心感を得られる
毎月の積み立てを続けていると「未来に向けて行動している」という実感がある(これが精神的な安定につながる)。
【目標設定と達成感】
小さな目標(スモールステップ)を設定 → 達成することで自己肯定感が高まる
たとえば「毎月1,000円積み立てる」「1年間続ける」といった具体的な目標を立てて、クリアするごとに自信を深まっていく。
【サポートネットワークの活用】
家族や友人、専門家など、周囲のサポートを積極的に活用する
投資に関する悩みや不安を共有することで、心理的な負担を軽減。冷静な判断ができるようになる。
【健康管理】
心身の健康を維持する
規則正しい生活習慣を心掛け、適度な運動やバランスの取れた食事を摂る
→ ストレスが軽減され、ポジティブな気持ちで投資に取り組める。
ただし、マーケットの値動きに いちいち一喜一憂するのはやめましょう。ドキドキ感があって最初は楽しいかもしれませんが、いずれココロが疲弊してしまいます。
どうしても気になるようなら「1日1回〇時頃にチェック」など、証券会社のアプリを開く時間を決めてしまうと良いですよ。
再就職後の投資は、こうやって継続しよう
希望していた業種に再就職できてホッとしたよ! 無職のときに始めた積立NISAは、そのまま放置しておけばいいのかな?
それは良かったですね! せっかく無職期間中にスタートした積立NISA。家計収支を再評価しつつ、できれば投資を加速させてください。
再就職後の新しい職場に慣れるまでは、きっと忙しくなりますね。
そんな時こそ、無職期間中に勉強した投資の知識が生きてきます。ここでは、再就職後の投資継続に関するアドバイスをご紹介しましょう。
【収入の一部を積立に回す】
再就職後に得られるようになった安定収入を積立NISAに回す(投資額を増やす)
→ 資産形成を加速。たとえば「収入の10%を投資する」といったルール設定が有効。
【生活費と投資資金のバランスを再評価】
再就職後に生活費が変動することがある
→ 生活費と投資資金のバランスを再評価し、適切な投資額を設定。
【長期的な目標を設定】
再就職後のキャリアビジョンをもとに長期的な資産形成の目標を明確化
→ 「定年退職時の貯蓄額」や「子供の教育資金」など、具体的な目標金額を設定し積立を継続。
心理的な安定を保ちながら、無理のない範囲で投資を続けることが、成功への鍵。
無職期間中から再就職後に至るまで、計画的かつ持続的に積立NISAを活用して、長期的な資産形成を実現してください。
まとめ:無職期間中に積立NISAの戦略を練ろう
最後までお読みいただき、ありがとうございます。無職でも積立NISAを利用して資産形成ができることを理解していただけたでしょうか。
積立NISAは長期的な資産形成に適した制度であり、将来の不安を少しでも和らげる手助けとなります。
無職だからといって、あっさりと諦めては もったいない。何事も小さな一歩から始めることが大切です。
大事なことを忘れないように、もういちどポイントの復習をして筆を置きますね。
・積立NISAは、収入に関係なく利用できる。
・通常の証券口座開設時に求められる「収入証明」や「雇用証明書」が積立NISAでは(原則)不要。
・無職の利点は「時間の余裕」。やる気さえあれば、いくらでも投資の知識を吸収できる。
・生活費と投資資金のバランスを取りながら積立NISAを利用する。これは無職・有職を問わず同じ。
・経済基盤が軟弱な無職期間。予期せぬ出費や緊急時の対応にも備えておこう。
・無職だと、どうしても投資資金は限られる。だからこそ、証券会社との相性は重要。
・積立NISAを無職期間中に始めるなら、計画的なアプローチが必須。
・無職期間中は心理的なストレスも大きな課題。積立NISAを活用してメンタルを整える。
・再就職後の積立NISA。家計収支を再評価しつつ、できれば投資を加速させる。
最後まで読んでくださって ありがとうございます。FPコラムでは ほかにもお金と生活インフラに関する記事を書いてるので、ぜひチェックしてくださいね!
【執筆者:内田 正雄(Uchida Masao)】
ファイナンシャルプランナー(FP)|住宅ローンアドバイザー|宅建士(資格者)|証券外務員一種
タヌキと出会うのが珍しくない、のんびりした郊外に住む ファイナンシャルプランナー(FP)。横浜国立大学を卒業後、ミサワホームに入社。マイホーム取得という大きな買い物をサポートするためにFP資格を取得。ライフプランを作る重要性に目覚め、住宅ローンの有料相談を展開する保険代理店などで多くの経験を積んだ。豊かなライフスタイルにつながる情報を発信中。