ネット銀行で住宅ローンを借りようと思うんだけど、デメリットってあるのかな? ふつうの銀行と違うから、なんとなく不安で…。
こんな悩みを解決するために、わかりやすく記事を書きました。執筆は相談実績15年以上の現役ファイナンシャルプランナー(FP)が担当しています。
もちろんデメリットもありますよ。もし 住宅ローンをネット銀行で借りるなら、通常の金融機関と異なる特徴を あらかじめ把握しておくと安心です。
本記事では、ネット銀行の住宅ローンが選ばれる理由や、気をつけたいデメリット、さらに デメリットを解消してネット銀行の住宅ローンを賢く借りる方法を解説します。
それでは早速、FP相談の実務で得たエッセンスをお伝えしていきましょう。
ネット銀行ってどんな銀行?
ネット銀行って、ふつうの銀行のWeb取引(インターネットバンキング)と何が違うの?
いまどき、ネットで残高照会や振り込みができるなんて当たり前ですもんね。ここで ネット銀行について理解を深めておきましょう。
「インターネット専業銀行」が正式な呼称。インターネットまたは電話などの通信端末を介する取り引きに特化した普通銀行を指す。
通常の金融機関と違って店舗を持たず(あっても数店舗)、預金の入出金はコンビニのATMなどを利用する。
では、ネット銀行の特徴を詳しくお伝えしていきます。
リアルの店舗がない(例外あり)
実在の店舗が原則ゼロなら、従来の銀行に比べて 人件費や店舗運営のコストを大幅に抑制できます。
そのため、浮いたお金を使って 各種手数料を安くしたり、預金金利を高めに設定するネット銀行が目立つようです。「月3回まで、他行への振込手数料 0円」なんていう広告バナーを見たことがある人も多いのではないでしょうか。
なお、ネット銀行のカテゴリーでも、イオン銀行、新生銀行、住信SBI銀行は 全国に複数の店舗を構えています。
通帳がない
ネット銀行は、取引の履歴をWebサイトの画面で照会するのが一般的。PCやスマホの画面に表示されるだけでなく、Microsoft Moneyに自分のデータをダウンロードできるネット銀行もあります。
過去の取引データをCSVファイルやPDFファイルで提供しているネット銀行が多く、保存や管理が容易です。あとで検索したりするには、 紙媒体の通帳より便利でしょう。
最近はメガバンクでも、紙の通帳は有料化されてきたしね。
【三菱UFJ銀行】
2022年4月1日、「紙通帳利用手数料」を新設。以降に新規開設の口座では、年間550円の手数料が課される。
(18歳未満または70歳以上の個人は対象外)
【みずほ銀行】
2021年1月18日以降の新規開設口座に対し、通帳発行および繰り越し時に1,100円の手数料が徴収される。
(70歳以上は対象外)
【三井住友銀行】
2021年4月1日以降の新規開設口座では、年間550円の手数料がかかる。
(18歳未満と75歳以上は対象外)
そのほか、横浜銀行や千葉銀行 それに武蔵野銀行などの地銀でも、続々と通帳発行手数料を導入しています。
通帳は、私たちが想像してる以上に 銀行のコスト負担が大きいんです。
紙の通帳には1口座ごとに年間200円の印紙税が徴収され、さらに印刷費や管理コストも重い負担。これが銀行の収益を圧迫しているのは間違いありません。
とはいえ、(有料化前の)既存顧客は無料で通帳が利用できる状態が続きます。こうしたコスト差も、ネット銀行との競争では不利になるでしょう。
入出金はコンビニATMや他銀行
何度も言いますが、ネット銀行は店舗が原則ゼロ。そのため 自行の ATMを持っていませんが、代わりに 他行やコンビニのATMで入出金ができます。
それなら便利だけど、利用手数料はどうなるのかしら?
基本的に引き出し(出金)だけでなく、預け入れ(入金)にも手数料がかかります。ただし、一定の条件をクリアすれば無料(回数限定)になるネット銀行もあるので、安心してください。
ちなみに、ATMの故障でキャッシュカードが取り出せなくなった知人は、再発行手数料を請求されました。どうやらこのケースは「提携先ATMで拾得された場合」に該当し、使用者が無過失でも有料なんだそうです。
頻繁に発生する事象ではありませんが、自前のATMを持たない ネット銀行のデメリットと言えますね。
取扱い業務が少ない
ネット銀行は、得意分野に絞ったサービスを提供しています。
ネット銀行も 預金(普通預金・定期預金など)は取り扱う。これはメガバンクや地銀などの一般的な銀行と同じです。
いっぽう、ネット銀行が取扱わないサービスも多々あり、融資業務や小切手・証券類の振り出し(受け入れ)など 各行によってさまざま。
住宅ローンを提供する 主なネット銀行には、auじぶん銀行、ソニー銀行、paypay銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行 などがあります。
どうしてネット銀行の住宅ローンが選ばれるの?
ネット銀行の住宅ローンは、どういう理由で選ばれるのでしょうか?
「インターネットで手続きができる」「金利が低い」というメリットのほかにも色々あるので、詳しく解説していきますね。
ネット銀行以外と比べて 住宅ローンの金利が低い傾向
ネット銀行が選ばれる最大の理由は、なんといっても「金利が低いから」。住宅ローン総返済額を軽減できるのは魅力ですよね。
先ほども触れましたが、ネット銀行は実店舗を持たないことで 大幅なコスト削減に成功しています。
さらに、住宅ローンの申請書類をWebで受け付けるなど、通常の金融機関と比べて経費をかけない仕組みを構築しているから 金利を低く設定できるんです。
では、ネット銀行と通常の金融機関では住宅ローン金利にどのくらいの差があるのでしょうか?
・ソニー銀行: 0.397%(変動セレクト住宅ローン)
・SBI新生銀行: 0.420%(手数料定率型)
・auじぶん銀行: 0.169%(住宅ローン金利優遇割 2024年4月借り入れ)
・三菱UFJ銀行: 0.345%~
・みずほ銀行: 0.375%~
・三井住友銀行: 0.475%~
たしかにauじぶん銀行の住宅ローン金利は低いね。だけど、それ以外はメガバンクの住宅ローン金利に負けてるよ?
メガバンクだって住宅ローンを借りてほしいですからね。
でも、気をつけてほしいのは金利表示が「○○%~」となっていること。あくまで“最優遇金利”なので、あなたの属性(勤務先の規模や年収などの条件)によっては、もっと高い金利を提示される場合もあります。
もちろん、ネット銀行も属性を審査しますが、融資を受けられる場合には(メガバンクと比べて)上記金利が適用されるケースが多いようです。
なお、auじぶん銀行の金利が断トツ低いのは、自社の各サービスをセットで利用するのが条件だから。この優遇が適用されないと0.319%になるので注意しましょう。(それでもメガバンクには勝っていますが…。)
店舗に行かなくていい
ネット銀行はWebサイトで手続きが完了するので、わざわざ店舗へ足を運ぶ必要がありません。
通常の金融機関で住宅ローンの申込みをしようとすれば、少なくとも3回程度は店舗へ行くことになるでしょう。
① ローンの相談(事前審査)
② 書類の提出(本審査)
③ 契約手続、融資決済
最近は店舗が減ってるから、最寄りの支店でも電車で片道20分はかかるわね…。
その点、ネット銀行は「どこからでも」手続き可能です。そもそも店舗がありませんからね。
たとえば必要書類を提出するときも、スマホで写真を撮影してアップロードするだけ。めちゃくちゃ便利だと思いませんか?
これなら、「昼休みのオフィスで サクッと申込み」なんてことも できちゃいます。
時間を選ばず いつでも手続きできる
ネット銀行が便利なのは、時間に縛られないこと。24時間いつでもOKです。
なんだか“午後3時にシャッターが閉まる銀行”のイメージとは、かけ離れてますよね。
それに比べて、毎週土日に窓口業務をしてくれる通常の金融機関は まだまだ少ない。基本的には平日の昼間に訪問することになるでしょう。
通常の金融機関だと、何度も有給休暇をとらなきゃいけないのか…。大変だなぁ。
団体信用生命保険が手厚い
ネット銀行は団体信用生命保険も充実しています。
金利競争だけでは疲弊するからでしょうか。メガバンクをはじめとした通常の金融機関も団体信用生命保険に力を入れてますが、保障はオプション扱いで有料(金利に上乗せ)。
いっぽう、ネット銀行の住宅ローンは 金利に上乗せナシ(無料)で団体信用生命保険の保障を手厚くできます。
それでは、主なネット銀行の団体信用生命保険(上乗せ金利ナシ)の概要をチェックしてみましょう。
【auじぶん銀行】がん50%保障団信
・加入年齢 : 65歳未満
・保障内容①: 死亡または所定の高度障害状態住宅 → 住宅ローン返済を免除
・保障内容②: ガンと診断されたとき → 住宅ローン債務の50%を免除
【楽天銀行】団体信用生命保険(特約ナシ)
・加入年齢 : 65歳6か月未満
・保障内容①: 死亡または所定の高度障害状態住宅 → 住宅ローン返済を免除
・保障内容②: 夫婦どちらかが死亡 → 住宅ローン返済を免除(夫婦連生型を利用。上乗せ金利0.2%)
【PayPay銀行】一般団信
・加入年齢: 65歳未満
・保障内容: 死亡または所定の高度障害状態住宅 → 住宅ローン返済を免除
これ以外にも、ネット銀行の団体信用生命保険では多彩な保障を提供しています。しかも上乗せ金利ナシで利用できるプランが主流です。
もし団体信用生命保険の保障内容が 加入中の生命保険と重複するようなら、解約を検討するべき。そのぶん保険料を節約できて、家計の負担を減らせるでしょう。
ネット銀行の住宅ローンにデメリットはある?
ネット銀行の住宅ローンにはメリットがたくさん。そこで気になるのは「デメリットはないのか?」ですよね。
もちろん、ネット銀行にも デメリットだと感じるところはあるので、事前に理解しておきましょう。それでは早速、ネット銀行のデメリットについてお伝えしていきます。
ネット銀行以外と比べて 事務手数料が高い傾向
残念ながら、ネット銀行の事務手数料は(通常の金融機関と比べて)安くありません。そのため、住宅ローンを比較するときは、金利だけに目を奪われず 総返済額で比較するようにしましょう。
ネット銀行の事務手数料は「融資金額の2.2%」が主流です。
直接会って相談できない
ネット銀行ではWebサイトが窓口です。そのため、対面で質問したいことがあっても気軽に相談できません。
わからないことを直接質問できないのは不安ね…。
わかります。たとえば、住宅ローンの申請書類で記入の仕方がわからないとき。教えてくれる人が目の前にいたら安心ですよね。
もちろん、ネット銀行のWebサイトには質問コーナー(FAQ)が設けられているので、ちょっと調べれば 疑問は解決するでしょう。
また、チャット相談ができるネット銀行もあるようです。デジタル技術の進歩とともに、ネット銀行の利便性も向上していますよ。
Web手続きや郵送がめんどくさい
ネット銀行の住宅ローンでは「必要書類の郵送が面倒だ」という声をよく聞きます。でも最近は、WEB上で手続きが完結し、書類の郵送を不要とするネット銀行も登場しました。
もし郵送に煩わしさを感じるなら、WEB完結できるネット銀行を選びましょう。もし書類の不備があってもロスタイムを減らせるので、手続きがスムーズに進みますよ。
主なネット銀行では、どのくらい「Web完結」できるのでしょうか?
【auじぶん銀行】Web完結OK
契約書の記入&捺印不要。すべてWeb上の手続きで完了
【住信SBIネット銀行】Web完結OK
契約書の記入&捺印不要。すべてWeb上の手続きで完了
【イオン銀行】Web完結OK
必要書類をアップロード
【SBI新生銀行】Web完結OK
必要書類をアップロード
【楽天銀行】 Web完結 未対応
必要書類を郵送
ネット銀行で住宅ローンを借りるときのデメリットを解消する方法
ここまで、ネット銀行のメリットとデメリットを解説してきました。最後に、ネット銀行のデメリットを解消する方法をご紹介しましょう。
店舗があるネット銀行を利用する
すべてのネット銀行が、店舗を持たないわけではありません。もし対面での相談・手続きを希望するなら、店舗のあるネット銀行を選びましょう。
対面で相談できるネット銀行は、次の3行です。
【SBI新生銀行】
店舗で相談や手続きOK
【イオン銀行】
イオンモールやイオンにある店舗で相談や手続きOK
自宅からスマホやPCでオンライン相談もできる
【住信SBI銀行】
ローンプラザ、またはSBIマネープラザで相談や手続きOK
そういえば、駅前で「SBI新生銀行」や「住信SBI銀行」の看板を見たことあるよ。
いっぽう、イオン銀行はショッピングのついでに立ち寄れるのが便利ですね。日頃からクルマで移動する人には駐車場に困らないのも魅力です。
手続き方法の疑問は電話相談で解決する
対面じゃなくても、電話で疑問を解決できれば問題ない人も多いでしょう。
【SBI新生銀行】
住宅ローン専用の電話相談窓口「新生パワーコール」を設置
【auじぶん銀行】
土日祝でも電話相談できる「auじぶん銀行住宅ローンセンター」を設置
これらの電話相談窓口は「住宅ローン専門」なのが強み。対応してくれるは、知識が豊富な専門スタッフだから安心です。
スッキリ疑問を解決して、円滑に手続きを進めましょう。
まとめ:ネット銀行のデメリットを理解して 住宅ローンを有利に借りよう
メガバンクなど 通常の金融機関と比べると、まだまだ知名度が低いネット銀行。それでも、金利の低さや 利便性の高さを武器に 利用者を増やしてきました。
とくに住宅ローンは、いちど借りてしまえば 銀行と接触する機会は まずありません。毎月、預金口座から返済額が引き落とされるだけです。
そう考えると、店舗を持たない(店舗数が少ない)ネット銀行で住宅ローンを借りるのは、とても合理的な選択だと言えるでしょう。
ぜひ賢い判断をして、お得な住宅ローンを借りてください。
大事なことを忘れないように、もういちどポイントの復習をして筆を置きますね。
・ネット銀行の住宅ローン金利は、低い傾向にある。
・店舗に行かなくても手続きを済ませられるのが、ネット銀行の魅力。
・ネット銀行の団体信用生命保険は、上乗せ金利ナシでも充実している。
・けっして安いとは言えないのが、ネット銀行の事務手数料。
・Web完結対応のネット銀行を選べば、郵送の手間が省ける。
・店舗で手続きできたり、電話で相談できるネット銀行もある。
最後まで読んでくださって ありがとうございます。FPコラムでは ほかにもお金と生活インフラに関する記事を書いてるので、ぜひチェックしてくださいね!
【執筆者:内田 正雄(Uchida Masao)】
ファイナンシャルプランナー(FP)|住宅ローンアドバイザー|宅建士(資格者)|証券外務員一種
タヌキと出会うのが珍しくない、のんびりした郊外に住む ファイナンシャルプランナー(FP)。横浜国立大学を卒業後、ミサワホームに入社。マイホーム取得という大きな買い物をサポートするためにFP資格を取得。ライフプランを作る重要性に目覚め、住宅ローンの有料相談を展開する保険代理店などで多くの経験を積んだ。豊かなライフスタイルにつながる情報を発信中。