家を買うと諸費用を払ったり、家具・家電を買うのに現金がいるよね。住宅ローンにはどこまで組み込めるの?
こんな疑問を解決するために、わかりやすく記事を書きました。執筆は相談実績15年以上の現役ファイナンシャルプランナー(FP)が担当しています。
人件費や資材の上昇傾向を見て、予定より早く家を買う人が増えています。まだ貯金ができてないので、諸費用の支払いに悩む声が多いですね。
FPの実務経験で得たエッセンスをギュッ!と凝縮。サクッと読み切れるボリュームにまとめたので、読めば わずか数分で「住宅ローンに組み込めるものと、その活用方法」がイメージできるでしょう。
住宅ローンに組み込めるものを知って賢く家を買う
家の購入費用は、意外と現金で払うものが多くて困ったよ…。
「頭金0円でOK」みたいな広告を目にすれば、手持ち金が無くても大丈夫だと勘違いしても仕方ありません。
家を買うときの諸費用は、新築マンションで物件価格の5%、建売住宅や中古物件で10%、注文住宅で12%が目安だと言われています。たとえば、3,000万円の新築マンションは150万円、5,000万円の注文住宅なら600万円くらい。
諸費用のなかには住宅ローンに組み込めるものもありますが、組み込めないものは支払いに困るかも…。早速、その対処法をお伝えしていきましょう。
諸費用のお金が足りないとき、どうする?
貯金が足りなくて諸費用が払えない…。どうしよう?
慌てなくても大丈夫。ちゃんと方法はありますよ。
住宅ローンの融資対象となるのは原則として「家」と「家を建てるための土地」です。したがって、家と直接的な関わりの無いものは借りられません。
・住宅の不動産取得税
・固定資産税、都市計画税(土地や中古住宅の取得時、日割り按分で支払う)
・引っ越し費用
・カーテン
・家具
・家電
金融機関によって違いますが、住宅ローンでは上記費用を借りられないのが一般的です。
ただし、最近ではネット銀行を中心に特色のある住宅ローン商品が開発され、引っ越し費用や家具・家電まで組み込めるようになってきました。
諸費用のお金が足りないときは、これから紹介する金融機関を検討してみるといいでしょう。
住宅ローンでここまで組み込める
諸費用の融資対象が広い金融機関を、一覧表にまとめてみました。
金融機関 | auじぶん銀行 | 住信SBIネット銀行 | ソニー銀行 | イオン銀行 | 楽天銀行 | paypay銀行 | みずほ銀行 | フラット35 |
印紙税(売買契約書などに貼付) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
登録免許税(登記に要するもの) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
固定資産税・都市計画税(取得時) | 〇 | 〇 | ||||||
司法書士報酬 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
住宅ローン事務手数料(借入時) | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
火災保険料 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
不動産仲介手数料 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
引っ越し費用 | 〇 | 〇 |
引っ越し費用まで借りられる銀行もあるんだね。
はい。銀行を選べば、いろんな諸費用を借りられます。
ただし、住宅ローンで諸費用まで借りるときは、融資条件が変わることもあるので気をつけてください。
たとえば、ソニー銀行は物件の購入価格+300万円が上限(自宅購入の場合)で、借り入れ金額が物件購入価格を超える場合は金利が0.05%上乗せされます。
金融機関を絞り込む前に、商品概要を読んだり 窓口に問い合わせるといいでしょう。
家具・電化製品の購入費用まで借りるには?
さすがに、家具や電化製品を買うお金は借りられないわよね?
住宅ローンでは難しいですが、諸費用ローンなら借りられます。
諸費用ローンとは、住宅購入にかかる様々な費用を融資対象にするローン。これを使えば、家具・家電の購入費用まで資金調達できるんですが、金利が高いのが難点です。
ローンは利用者や資金使途が自由になるほど、金利が高くなる傾向があります。そこで、少しでも低金利で借りるために、住宅ローン利用者限定の諸費用ローンを検討してみてはいかがでしょうか。
違いが分かるように、利用者を限定しないタイプの諸費用ローンと比較してみました。
タイプ | 利用者限定あり | 利用者限定なし |
金融機関 | イオン銀行 | オリコ |
商品名 | 住宅ローン利用者限定ローン | 新生活応援ローン for ARUHI |
申込対象者 | 住宅ローン利用者(他行OK) | 満20歳以上で安定収入あり |
金利(固定) | 3.8%~8.8%(審査で決定) | 7.8% |
借入金額 | 10万円~700万円 | 10万円~300万円 |
借入期間 | 1年~8年 | 6ヵ月~7年 |
資金使途 | 家具・電化製品の購入費用等 | ・引っ越し費用 ・家具購入費用 ・固定資産税精算費用等 |
「利用者限定あり」の3.8%で借りられたら、それほど負担にならなそうだな。
審査結果によりますが、もし「利用者限定あり」で3.8%なら 「利用者限定なし」7.8%との違いは大きいですね。
300万円を返済期間7年で借りた場合に、利息がどのくらい異なるのか見てください。
タイプ | 利用者限定あり | 利用者限定なし | 差 |
金利(固定) | 3.8% | 7.8% | 4.0ポイント |
借入金額 | 3,000,000円 | 3,000,000円 | 0円 |
返済期間 | 7年 | 7年 | ー |
月返済額 | 40,730円 | 46,460円 | 5,730円 |
総返済額 | 3,421,349円 | 3,902,619円 | 481,270円 |
利息 | 421,349円 | 902,619円 | 481,270円 |
金利が4ポイント違うだけで、支払う利息が約48万円も多くなるのね
金額を見ると、その差が実感できるでしょう。
住宅ローンの返済は、ズッシリ家計にのしかかります。負担を軽くするために、できる努力はしておくべき。家具・家電の購入費用まで借りるなら、少しでも金利の低い商品を選びましょう。
住宅ローンに組み込めるものは全部借りたほうがいい?
住宅ローンに組み込めるものは銀行によって違うんでしょ。調べるの面倒くさいなぁ…。
気持ちは理解できます。不動産業者さんから勧められる提携ローンなら、全部おまかせで実印を押すだけですからね。
でも、本当にそれでいいんでしょうか?
住宅ローンに組み込めなかった諸費用は現金で払うことになりますが、手持ち資金が足りなければ他の手段で借りるしかありません。
その場合、家計の負担がどのくらい増えるのか見ていきましょう。
住宅ローン vs 諸費用ローン
住宅ローンはハウスメーカーのオススメにしようかな。組み込めないものは、諸費用ローンで借りればいいでしょ。
FP相談でも、いちばん多いパターンですね。安易に判断する人のお財布には穴が空いてるも同然。お金がどんどんこぼれ落ちていきますよ。
諸費用ローンで借りると、住宅ローンに組み込める場合と比べてどのくらい違いが出るのでしょうか? 比較表を見れば、その差は一目瞭然です。
住宅ローンに組み込めない銀行が多い、引っ越し代、不動産仲介手数料、火災保険料。これらを住宅ローンに組み込めるauじぶん銀行と諸費用ローンで比べました。借入金額は100万円で設定しています。
住宅ローン | 諸費用ローン | 差 | |
金融機関 | auじぶん銀行 | イオン銀行 住宅ローン利用者限定ローン | ー |
金利 | 0.169%(変動) | 3.8% *1(固定) | 3.631ポイント |
借入金額(諸費用分) | 1,00,000円 | 1,00,000円 | 0円 |
返済期間 | 35年 | 7年 | ▲28年 |
月返済額 | 2,452円 | 13,576円 | 11,124円 |
総返済額 | 1,029,730円 | 1,140,427円 | 110,697円 |
利息 | 29,730円 | 140,427円 | 110,697円 |
毎月の負担が ぜんぜん軽いのに、利息も安く済むわ。
住宅ローンの金利はとても低いため、借入金額が100万円程度でも このくらいの差がつきます。
auじぶん銀行の住宅ローンは変動タイプなので、将来 金利が上昇するかもしれません。そのときは繰り上げ返済で対応できるよう、(諸費用ローンとの差額)約1万1,000円は毎月 貯めておくと安心ですね。
諸費用ローン vs クレジットカード(分割払い)
家具や家電なんて、クレジットカードの分割払いでいいんじゃない?
いちばん簡単な方法ですが、そのぶん利息をたくさん払うことになりますよ。
家具や家電は高価ですが、クレジットカードのリボ払いなら毎月の返済額は少額で済みます。しかし、ローンと同じく支払を先延ばしさせるだけですから、金利に無頓着ではいけません。
家具・家電なら諸費用ローンでも借りられますが、クレジットカードのリボ払いと比べてどのくらい違いが出るのでしょうか? 比較表をご覧ください。
諸費用ローン | クレジットカード(分割払) | 差 | |
金融機関 | イオン銀行 住宅ローン利用者限定ローン | JCB | ー |
金利(手数料) | 3.8% *1 | 15.0% | 11.2ポイント |
借入金額(諸費用分) | 1,00,000円 | 1,00,000円 | 0円 |
返済期間 | 2年 | 2年 | ー |
月返済額 | 43,335円 | 48,487円 *2 | 5,152円 |
総返済額 | 1,040,051円 | 1,161,846円 | 121,795円 |
利息 | 40,051円 | 161,846円 | 121,795円 |
事務手数料 *3 | 2,750円 | ー | ▲2,750円 |
利息を約12万円も余計に払うなんて、信じられない…。
ちょっとした手間を惜しむだけで、こんなにお金を失うんです。
クレジットカードの分割払いは、とってもお手軽。それと比べたら、諸費用ローンの申し込み手続きは面倒かもしれません。でも、こういうところで手抜きをしていると、いつまで経ってもお金は貯まらないでしょう。
住宅ローン vs 親から借りる
不動産仲介手数料、火災保険料、引っ越し費用くらいなら、親から借りれるかも。
それは素晴らしい。親御さんのお財布に余裕があるなら、ぜひお願いしてみましょう。
親からお金を借りる場合、無利息が原則です。もちろん利息をつけても構いませんが、とくに利率を決めていなければ法定利率が適用されます(2023年4月1日~2026年3月31日は、年3%)。
本来、無利息での借り入れは利息分が贈与。しかし、利息が少額の場合は贈与にならないので安心してください。
たとえば100万円(2年返済)に対する法定利率(3%)の利息は31,539円。この利息分が贈与だと見做されても贈与税はゼロだからです(年110万円までは非課税)。
なお、借りる金額が110万円を超える場合には、貸し付けそのものが贈与にならないよう 金銭消費貸借契約を書面で締結すること。返済は自分の口座から 親の口座へ振り込めば、履歴が残ります。不明な点は、お近くの税務署に相談しましょう。
住宅ローンとの違いを、試算してみました。わざわざ比較表で確認するまでもありませんが(笑)
住宅ローン | 親から借りる | 差 | |
金融機関 | auじぶん銀行 | ー | ー |
金利 | 0.169%(変動) | 0% | ▲0.169ポイント |
借入金額(諸費用分) | 1,00,000円 | 1,00,000円 | 0円 |
返済期間 | 35年 | 2年 | ▲33年 |
月返済額 | 2,452円 | 41,666円 | 39,214円 |
総返済額 | 1,029,730円 | 1,00,000円 | ▲29,730円 |
利息 | 29,730円 | 0円 | ▲29,730円 |
住宅ローンのご相談は、ふくろうの保険Naviにご依頼ください。FPが無料で、上手な借り方をアドバイスをします。
まとめ:住宅ローンに組み込めるものは金融機関で異なる
諸費用を払うお金が足りないなら、できるだけ住宅ローンに組み込める金融機関を探すこと。本記事を読み終わったあなたなら、住宅ローンの優位性をご理解いただけたでしょう。
家を買うときは大きなお金が動くため「あの時は、金銭感覚がマヒしてた」という声をよく耳にします。その状態でボーっとしていると、普段はぜったい見過ごさないような損失を被りかねません。
気持ちを引き締めて、少しでも家計の負担を減らすようにしてください。
最後にもういちどポイントの復習です。
・住宅ローンでは、家と直接的な関わりのない費用は借りられない。
・よく探せば、諸費用の融資対象が広い金融機関もある。
・家具や家電の購入費用まで借りるなら、諸費用ローンを検討する。
・住宅ローンで組み込めるものはフル活用し、できるだけ諸費用ローンの利用は控える。
・安易にクレジットカードの分割払いを使わない。
・親から諸費用を借りられるなら、ぜひお願いする。
最後まで読んでくださって ありがとうございます。FPコラムでは ほかにもお金と生活インフラに関する記事を書いてるので、ぜひチェックしてくださいね!
【執筆者:内田 正雄(Uchida Masao)】
ファイナンシャルプランナー(FP)|住宅ローンアドバイザー|宅建士(資格者)|証券外務員一種
タヌキと出会うのが珍しくない、のんびりした郊外に住む ファイナンシャルプランナー(FP)。横浜国立大学を卒業後、ミサワホームに入社。マイホーム取得という大きな買い物をサポートするためにFP資格を取得。ライフプランを作る重要性に目覚め、住宅ローンの有料相談を展開する保険代理店などで多くの経験を積んだ。豊かなライフスタイルにつながる情報を発信中。